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「春に攫われてしまうあなたを、息を呑むほどうつくしいと思ってしまったから。」
どちらにせよ、幻聴もいい加減にしてほしいものだと、彼女はそう思ってすぐに忘れてしまったに違いない。
「じゃあ、私からもお花についてお伝えすべきことを、よろしいですか?
ふふ、ほんとうに素敵な贈り物なんですよ。アセビの花言葉は、『犠牲』と『献身』、それから──」
(またいつか。……できることなら、おまえが蘇る季節に。)
「……終わってしまったんだな、」
そうして愛しの窓辺に春が咲き、柔らかな日差しは今日も世界を祝っている。
ひとつの執念によって氷に覆われかけた世界のことを。ひとつの執念によって生を取り返した世界のことを。
時に転んでしまっても、やがて前へ進もうと立ち上がるヒトという生命のことを。
敬具
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