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「ヒッ……」
空いた時間を使って待合室の椅子に座る青年に話しかけてみると、
案の定か、彼はいやに怯えた顔で身を縮こまらせた。
「いや、気にしないでいいよ……ヴェールさんとガレニルさんか……
私は雲雀。見ての通り、この診療所の医者だ。」
決して、それを免罪符だとは思わないけど。
左鎖骨の部分が抉れて、ばけものの黒と自分の赤でおかしなことになって見えた。
傷は浅いはずなのに、内臓は少しも傷まないのに、
なぜか喉の奥からせりあがってきた、黒いものを、噴き出して、足が縺れる。
「……お前、まさか──」
「まずは役所の様子だね。閑散としていてもの寂しい……窓口が一面壁で覆われていて、空間としての圧迫感も兼ね備えていた。所員の顔は見えなかったが、声は鮮明にやり取りできたよ。」
「それから、こんなパンフレットもありました。」
「ほんとうに、素敵な言葉ね……。」
第五話スチル協力:葦部(@hg13_6)/敬称略
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